2002年に公開された劇場版名探偵コナンの第6作「ベイカー街の亡霊」は、コナンファンの間で根強い人気を誇る作品の一つです。
しかし、巷では「ベイカー街の亡霊」の放送が禁止されているという都市伝説があるそうです。
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最初にテレビ放送されたのは公開翌年の2003年。次に放送されたのが2018年でした。
同じく人気作品である初期作品の「時計じかけの摩天楼」や「天国へのカウントダウン」は過去5回も放送していますが、「ベイカー街の亡霊」は15年間も放送がなかったのです!
今回は、「ベイカー街の亡霊」が放送禁止と噂されている根拠や15年間地上波放送がなかった理由について検証していきたいと思います。
名探偵コナン「ベイカー街の亡霊」のあらすじを簡単にご紹介
まずは映画について簡単にご説明します!
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「ベイカー街の亡霊(ベイカーストリートのぼうれい)」は、2002年4月20日に公開。
劇場版名探偵コナンの第6作目の作品で、興行収入34億円の大ヒットとなりました。
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今や100億円超えの大人気コンテンツとなっているコナン映画ですが、当時はコナン史上初の30億円超えの作品となり、2002年度の邦画ランキングで第2位を獲得!
この記録は2009年の第13作「漆黒の追跡者(スナイパー)」の35億円に更新されるまで7年間破られませんでした。
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物語は深夜のアメリカ。ビルの高層階から一人の少年が飛び降りるシーンから始まります。
彼の名前はヒロキ・サワダ。IT業界の帝王と言われるシンドラーの下、人工知能「ノアズ・アーク」やDNA探査プログラムをたった一人で発明した弱冠10歳の天才少年でした。
ヒロキが謎の自殺を遂げて2年後、IT企業シンドラー社が仮想体感ゲーム機・コクーンを開発し、発表会が開かれることになります。
発表会にはコナンや蘭、少年探偵団も招待され、実際にゲームを体験することに。
しかし、コクーンのシステムは「ノアズ・アーク」に乗っ取られ、全員がゲームオーバーになると特殊な電流をゲーム参加者の脳に流して命を奪うという危機に陥ってしまいます。
ベイカー街の亡霊が放送禁止になったと噂される5つの理由
「ベイカー街の亡霊」は公開翌年の2003年にテレビ放送。しかし、その後2018年まで15年間放送がありませんでした。
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「ベイカー街の亡霊」は、数多いコナン作品の中でも人気が高いにもかかわらず、長い間放送されなかったため、ファンの間で放送禁止になったのではないかという噂が広まりました。
噂の根拠について、一つ一つ検証していきましょう。
子供が自殺する描写
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物語の冒頭にヒロキが屋上から飛び降りるシーンがあり、これがBPOに引っかかったため放送できないと噂されているようです。
「僕もノアズ・アークみたいに飛べるかな」という言葉を残して自ら命を絶つショッキングなシーン。
厳しい監視体制が敷かれ、友人と遊ぶことすら許されなかった環境に耐え切れなかったのです。
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殺人や死体が毎回登場するコナンですが、意外にも子供が死ぬ描写はこれまで描かれていませんでした。
この点が名作ぞろいのコナン作品の中でも異色と言われている理由の一つです!
実際には、2003年にも地上波でノーカット版が放送されており、放送禁止というのは単なる噂に過ぎなかったようです。
子供が次々と消えてゆく描写
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本作の舞台はヒロキが作り出した仮想空間です。
メインキャラクターである蘭や少年探偵団を含めた子供たちが次々とゲームオーバーになり消えていきます。
仮想空間の中とは言え、全員がゲームオーバーになれば実際に命を落としてしまう設定です。
ヒロキの自殺を含め、子供たちが死んでいくストーリーが、教育上いかがなものか…?と疑問があがり放送禁止となったとか…。
バトルロワイアル的要素が、見ている子供たちにとってショッキングな内容だったかもしれませんが、実際にクレームが来たという話はないため、ただの噂に過ぎないようです。
本編で日本社会への風刺的な発言
本作は、日本の現代社会そのものに対する皮肉であるとされています。
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ゲームの参加者は大企業や政治家の子供ばかり。その様子を見て灰原哀がこう言います。
「まるで悪しき日本の世襲制が凝縮された光景ね。こうした世襲制と共に人間の過ちの歴史が繰り返される訳よ。政治家の息子は政治家になる。頭取の息子は頭取になる。これじゃあいつまで経っても日本は変わらないって事よ。」
子供向け映画にもかかわらず、痛烈な社会批判をぶっこんでくる場面がこの映画の魅力でもあります!
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さらに、このゲームを作ったヒロキの目的は、権力者の子供を集めて亡き者にすることによる「日本のリセット」だったのです。
現実の日本でも、政治家や大企業による既得損益が残っており、脚本家がこれを皮肉として表現していたと言われています。
これらの発言が、大企業のスポンサー収入によって成り立つテレビで放送されない理由の一つとして噂になりました。
脚本家の野沢尚の自殺
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「ベイカー街の亡霊」の脚本を担当したのは、江戸川乱歩賞を受賞した推理小説家の野沢尚さんです。
野沢尚さんは、ドラマや映画を中心に活躍する脚本家で、数々のヒット作を手掛けてきました。
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コナンファンだった野沢尚さんが、自らコナン映画の製作スタッフにアプローチをかけたんだそう。
野沢尚さんがアニメに携わることは初めてで、コナン作品に珍しく子供が死ぬシーンが描かれる所以も脚本を担当した野沢尚さんの影響だったようです。
映画監督を務めたこだま兼嗣さんによると、野沢尚さんの起用は「長年劇場版を続けていくうえでのマンネリ化を防ぐためだった」そうです。
結果的に、斬新な内容が受けて当時のコナン作品史上最高の売り上げを叩き出しました。
出典:四国新聞
しかし、「ベイカー街の亡霊」の公開から2年後の2004年、野沢尚さんは事務所マンションで首を吊って自殺してしまいます。
作中ではヒロキも自ら命を絶ってしまうという内容のため、野沢尚さんの死と重なることから放送することを控えたのではないかと言われています。
テレビ放送のために編集作業が必要
出典:日テレ公式チャンネル
コナン映画は、基本的に金曜ロードショーで放送されることがほとんどです。
金曜ロードショーは毎週金曜日21:00~22:54に放送。
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「ベイカー街の亡霊」の上映時間は107分ですが、CMを入れてしまうと2時間では収まり切らなくなってしまうため、本編を90分程度に編集する必要がありました。
2003年の放送では、公開翌年ということもありノーカット版が放送されていましたが、そこから15年間放送されなかったのは、短縮版への編集作業が発生するためだった可能性があるようです。
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実際に2018年の再放送では、オープニングやエンディングなどがカットした再編集版が放送されています。
さらに、全編セル画で制作された最後の劇場版「ベイカー街の亡霊」は、デジタルリマスター作業が必要だったため、人気作品でありながら再放送まで時間がかかったと言われています。
ベイカー街の亡霊が今でも絶大な人気を誇る5つの理由について
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先述している通り、「ベイカー街の亡霊」の興行収入は34億円で、当時のコナン映画として最高収益を記録しました。
しかし、「ベイカー街の亡霊」では、ヒットの要因とされる以下の要素が一つも出てきません。
- 怪盗キッド、服部平次などの人気キャラクターが登場しない
- 黒ずくめの組織が登場しない
- 阿笠博士のメカが使えない
それでも、今なお人気の高い作品の一つであり、2024年公開の最新作を含めた”名探偵コナンおすすめ映画ランキング”では、「ベイカー街の亡霊」が第1位に輝きました!
出典:みんなのランキング
人気キャラや黒ずくめの組織が登場しないにもかかわらず、公開から20年以上たっても色あせない「ベイカー街の亡霊」。
人気の理由は一体どこにあるのでしょうか?
ストーリーが面白い
人気の大きな要因の一つは、ずばりストーリーの面白さでしょう!
本作は、コナンの父・工藤優作が現実世界で起きた殺人事件を解決、コナンが仮想空間での謎解きと、同時並行で親子がそれぞれの事件に立ち向かっていく展開が見どころです。
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近年のコナン映画と言えば、爆発に次ぐ爆発で、お腹いっぱいになるくらいの派手なアクションが主軸になっていますよね。
「ベイカー街の亡霊」では、冒険要素もありつつミステリー要素が強く織り交ぜられているので、推理好きには嬉しいポイントです!
最先端のAIや人工知能の舞台設定
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「ベイカー街の亡霊」は、仮想体感ゲーム機・コクーンに入って、ゲーム内で謎解きをしていくストーリーです。
今でこそVRやAIを取り扱った作品は多くなりましたが、2002年当時は世間に浸透しておらず、まだまだファンタジー感のあるSFの世界の話でした。
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しかし、ここ数年の技術の進歩から現実味を帯びてきており、本作は時代の先駆けをいく映画としても注目を集めました。
19世紀末のロンドンが舞台
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コナンが仮想空間の中で体験したゲームの舞台は19世紀末のロンドン。
このステージのゲーム内容は、連続殺人鬼・切り裂きジャックを捕まえるものでした。
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ゲームの中では、シャーロック・ホームズのネタも数多く登場。
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ゲームの中にはモリアーティ教授や、ロンドンにある実際のホームズ博物館などが登場するため、コナンやホームズ好きには堪らないシーンも出てきます。
これまでのコナン作品と異色の世界観
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本作の脚本家は推理小説家の野沢尚さんであるため、これまでに公開されているコナン作品とはかなり毛色が違います。
コナンと言えば、ヒロイン蘭とのラブロマンスが土台にありますが、本作には全くと言っていいほどその要素がありません。
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野沢尚さんは、ラブストーリーにしてほしいという原作者・青山剛昌さんからの強い要望を実現できなかったことが心残りだと語っています。
尺の都合からカットしたようですが、野沢尚さんの脚本で蘭たちのラブストーリーも見てみたかったですね…。
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また、ゲーム世界が舞台という設定ゆえに阿笠博士のメカは使いものにならず、蝶ネクタイ型変声機やキック力増強シューズなどが登場しませんでした。
お助けアイテムが使えないとなると、頼りになるのはコナンの”頭脳”です!
身一つで解決の糸を手繰り寄せるコナンの推理が、「名探偵コナン」の原点を思い出させてくれます。
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さらに、日本社会の世襲制批判や、現代日本の教育における課題を痛烈に見せつけるシーンなど、社会的メッセージが強い点もコナン作品としてかなり異例であり見どころの一つです。
オリジナルキャラクターの声優陣
近年のコナン映画では、俳優やタレントがオリジナルキャラクターの声を務めることが多い傾向にありますが、初期作品ではプロの声優が担当しています。
■ヒロキ・サワダ役/折笠愛
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本作の重要人物、天才少年のヒロキを演じたのは折笠愛さんです。
折笠愛さんは、妖艶な女性や勝気なお姉さん役を演じる一方で、少年役にも定評があります。
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折笠愛さんは、これまでもコナン作品で複数のキャラクターを担当。
円谷光彦役の大谷育江さんが休養した際に、折笠愛さんが代役として登場したこともありました。
■諸星秀樹役/緒方恵美
出典:クランクイン!
警視副総監の孫・諸星秀樹役を演じたのは緒方恵美さんです。
緒方恵美さんは、「新世紀エヴァンゲリオン」の碇シンジ役、「幽☆遊☆白書」の蔵馬役などで有名ですよね。
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ちなみに、「ベイカー街の亡霊」で緒方恵美さんが演じた諸星秀樹は、この映画の一番の被害者と言われているんです!
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ゲームを支配した人工知能「ノアズ・アーク」が正体を隠して行動するために、諸星秀樹の姿に成り代わっていたので、本人が何も知らないうちに事件は解決してしまいました。
当然、ゲームの記憶もないため、憎たらしいボンボングループの中では唯一、改心することなく現実世界に帰還することになったのです(笑)かわいそうに(笑)
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やはり、プロの声優だと、違和感なく物語に入り込めるので、安心感がありますよね…!
逆に、ゲスト声優が残念すぎると、作品自体に魅力がなくなってしまうことも…。
出典:moviewalker
筆者の場合、第16作の「11人目のストライカー」がそれにあたりますが、見ていない方は是非見てほしいです(^^)!ある意味楽しめます(笑)
まとめ
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「ベイカー街の亡霊」は、公開から20年以上たった今もなお、最高傑作として挙げられるほどの人気作品であることがわかりました。
また、2003年、2018年にテレビ放送されていることから、「ベイカー街の亡霊」が放送禁止されているというのは単なる噂に過ぎませんでした。
15年間再放送がなかったのは、“テレビ放送用の編集作業が必要だったから”が一番の有力説ではないかと考えられます。
2018年に編集版が作成されたので、今後はもっと短いスパンで放送されるのではないでしょうか(^^)♪
気になる方はサブスクで見てみるのもアリ!第1作目から順番に追っていくと、新たな視点での発見があるかもしれないので更におすすめですよ!